VPNとは?- VPNについて学ぼう

仮想プライベートネットワーク(VPN)は、ユーザーの実際のIPアドレスを外部から見えないように隠し、インターネットにアクセスする際に安全で暗号化されたトンネルを構築することによって、ユーザーのオンライン上での活動やプライバシーを保護します。これにより、見知らぬ第三者がユーザーのインターネット上での行動を監視し、データを盗むことをより困難にします。

VPNを使用することでどんなメリットがあるのかを知るためにも、まずは「バーチャル」「プライベート」「ネットワーク」という言葉を理解する必要があります。VPNは、デジタルサービスなので「バーチャル」といえます。従って、利用する際にハードウェアやケーブルは必要ありません。

VPNは接続を暗号化するので、ユーザーの個人情報などの「プライベート」を安全に保つことができます。また、暗号化されることにより、匿名でインターネットにアクセスすることが可能なので、政府機関やインターネットサービスプロバイダー(ISP)、サイバー犯罪者、およびその他の第三者は、ユーザーのデータにアクセスすることはできません。最後にVPNを使用することで、「ネットワーク」上でユーザーがお使いのデバイスやVPNサーバー、インターネット間の安全な接続を確立することを可能にします。

しかし、VPNについて知っておくべきことは、他にもまだあります。こちらの記事では、VPNに関する様々な点を深く掘り下げていきます。

VPNの歴史

ARPANET (Advanced Research Projects Agency Network)は、アメリカ国防総省 (DOD) が作成したインターネットのプロトタイプですが、立ち上げ後に専門家はVPNの必要性を感じました。同時にTCP/IP (Transfer Control Protocol/Internet Protocol) の開発にも影響を与えました。TCP/IPプロトコルは、リンク、インターネット、トランスポート、アプリケーションの4つの段階があります。

インターネットに関しては、ローカルのネットワークやデバイスがグローバルネットワークに接続する場合、漏洩の危険があることが明らかになりました。さらに第三者がネットワークを使用して、デバイスにアクセスすることができるため、サイバーセキュリティ上の懸念も生まれました。

そこで、1993年にコロンビア大学とAT&Tベル研究所の研究者が、最初のVPNであるソフトウェアIP暗号化プロトコル(swIPe)を開発しました。さらにVPN技術は、1994年にWei Xu、1996年にGurdeep Singh-Pallによってそれぞれ生み出されました。PPTP(Peer-to-Peer Tunneling Protocol)はマイクロソフト社の社員であったSingh-Pallが開発し、IPSecはXuが開発しました。その後、VPNは2000年代前半に企業や政府で広く採用され、2010年代半ばからは一般的に個人でも利用するようになりました。

VPNの使用用途

まず、VPNはユーザーがインターネット上でオンライン検索、アップロード、およびダウンロードを行なう際のトラフィック(通信)をISPに送信する前にサーバーを経由して送信します。その結果、ユーザーのデータがインターネットに送信される際にユーザーのデバイスではなく、あたかもVPNサーバーから発信されたかのように見えるようになります。

ユーザーのIPアドレスは、ユーザーが普段使っているネットワーク専用で独自の数字の羅列であり、ISPやその他の関係者はそれがどんな数字なのかを知ることができます。しかし、VPNを使用することでユーザーのIPアドレスを隠し、別の場所のものを割り当てることで外部から本当のIPアドレスを見えないようにします。さらに一度接続すると、暗号化またはトンネルを追加するので、よりユーザーの身元を保護できます。このようにサーバーと暗号化トンネルによって、ISPや政府機関、ハッカーなどにユーザーのオンライン上での行動を監視される心配がなくなります。

VPNの種類

VPNには数多くの種類があるので、以下で紹介します。

  1. 個人向けVPNサービス

個人向けVPNは、「消費者向け」または「商用」VPN とも呼ばれます。インターネットとユーザーのデバイスとの間の仲介役として機能するサーバーに接続可能になり、さらに接続を暗号化することでオンライン上のユーザーの個人情報を隠し、所在地を変更できるようにします。

  1. SSL VPN

企業では、従業員がオフィスや自宅を離れている際に会社のインターネットにリモートでアクセスするためにSSL VPNを使用することがよくあります。また、個人が所有しているデバイスからのアクセスを可能にする一方で、会社のネットワークや従業員のデバイスを悪意のある人物や部外者から保護することもできます。

  1. Site-to-Site(サイト間)VPN

サイト間VPNは、組織内でのプライベートネットワークであるイントラネットを隠し、これらの安全なネットワークのユーザーが他のリソースへのアクセスを可能にします。

ユーザーのビジネスが多くの拠点を持ち、それぞれがローカルエリアネットワーク(LAN)をワイドエリアネットワーク(WAN)に接続している場合は、この種のVPNが有効です。また、2つの異なるイントラネットがあり、一方のイントラネットからもう一つのイントラネットへのアクセスを明確に許可せずに、それらの間でデータを通信したい場合にも、サイト間VPNは有効といえるでしょう。

このようなVPNは、主に大企業が利用しています。SSL VPNほどの柔軟性はなく、構築も難しいですが、大規模な部門内および部門間のコミュニケーションを確保するためには、最適な方法です。

VPNのメリット

VPNは、ユーザーに数多くのメリットを提供します。以下でいくつか紹介します。

  1. 位置情報をカモフラージュする

VPNのサーバーは、オンライン上で効果的に機能します。インターネットを利用する際にVPNを使用することでユーザーの位置情報は、他の国にあるサーバーから発信されるため、ユーザーの正確な位置情報をカモフラージュすることができます。加えて、ほとんどのVPNプロバイダーは、オンライン上でのユーザーの行動記録を保存しません。したがって、ユーザーの行動記録はどこにも残らないので安心です。

  1. 安全なデータ転送

リモートワークを通して効率的に仕事をするためには、ネットワーク上に保存されている企業データへのアクセスが必要になる場合がありますが、機密情報を共有する際に安全な接続を使用することはとても重要です。ネットワークにアクセスするためには、暗号化されたVPN接続が必要な場合がよくあります。VPNは、安全な環境でユーザーとリモートサーバーをリンクし、転送中のあらゆるデータを暗号化し、機密情報が漏洩し、悪用されることを防ぎます。

  1. ブロックされたWebサイトへのアクセス

学校、図書館、企業など、特定の組織では、ソーシャルメディアをはじめとする特定のウェブサイトへのアクセスを制限していますが、VPNの暗号化接続は、そのような制限を回避することができます。

  1. 検閲の回避

政府機関はしばしば検閲や監視を行なっており、なかには情報を検閲するという名目でそれ以上のことをする政府も存在します。しかしながら、VPNに接続をすることでIPアドレスが変更されるので、ブロックされたウェブサイトにアクセスするのと同じように検閲を回避することができます。

  1. マルウェアやトラッカーをブロック

空港やホテル、コーヒーショップなどで公共のWi-Fiを使用することは危険を伴う可能性があります。数多くのハッカーが脆弱な公共のWi-Fiを入口として、人々のパソコンにウイルスやキー入力を監視して記録するキーロガーなどの追跡ツールに感染させています。トラッキングツールはパスワードを含め、ユーザーが入力したあらゆるデータを記録します。特にハッカーは公共のサーバーを経由するトラフィックを盗み見しており、そこで得た情報を利用して被害者を追跡します。

VPNサービスプロバイダーは、VPNアプリを使用している間、ユーザーのコンピューターと接続先のサーバーとの間の接続を暗号化します。電子メールのログイン情報、画像、ファイル、クレジットカード情報などを誰にも見られたくない場合に有効な手段といえます。さらに利用者のみが鍵を保持することができるエンドツーエンド暗号化によって、サイバー犯罪者やハッカーはユーザーのデータにアクセスすることができなくなります。

  1. 価格差別を避ける

価格差別は、次の2つの方法でユーザーに影響を与える可能性があります。1つ目は、お住まいの地域です。例えば、ニューヨークのような場所は生活費も平均収入も高く、企業はこれらの地域の住民に対して、航空券などの商品の価格を高く表示するようにウェブサイトを設定します。

もう一つは、ISPがユーザーの嗜好や購入品を監視しているために価格差別に直面することがあります。ユーザーがある製品をよく購入することがわかると、ISPはユーザーの情報をメーカーに売ることもできてしまいます。その結果、メーカーはユーザーがいつも買っていることを把握しているので、より売上を伸ばすために価格を上げる可能性があります。VPNのプライバシーと匿名性に関する機能は、このような価格ターゲティングからユーザーを守ります。

VPNプロトコルとは?

VPNプロトコルとは、VPNがユーザーのデバイスと代理サーバーとの間の接続を確立するために使用する基準や指令の集合体のことです。各VPNプロトコルは、多くの伝送プロトコルと暗号化技術を組み合わせており、VPNアプリの設定から変更可能です。

VPNプロトコルには、以下のようなものがあります。

  1. OpenVPN

OpenVPNは、VPNプロトコルの代表的な存在で、速度と安全性で知られています。さらにソースコードは、オープンソース(一般にソースが公開されている)プロトコルとして、誰でもアクセス可能です。

そのため、悪用される可能性のある欠陥を発見した場合、このプロトコルをサポートする開発チームが速やかに修正することができます。オープンソースのソフトウェアを使用することによって、このVPNの作成者が何か不審な行動をとっていないかどうかを誰でも確認することもできます。

  1. IKEv2

IKEv2 (Internet Key Exchange version 2) は、セキュリティを確保するためにIPsecとともによく使用される信頼性の高いプロトコルです。このプロトコルは、OpenVPNと同様に256ビット暗号化を採用しており、高速な接続を提供することができます。IKEv2はモバイルデータとWi-Fiネットワークの切り替えが簡単なため、特にモバイル機器に有効といえます。しかし、OpenVPNとは異なり、オープンソースではありません。

  1. L2TP

マイクロソフトとシスコ(Cisco)は、PPTP(後述)の代わりにL2TP (Layer 2 Tunneling Protocol)を作成しました。L2TPはVPN接続の確立を担当し、セキュリティのためにIPsecと組み合わせて使用されることが多いです。

  1. PPTP

現代社会において、PPTP (Point-to-Point Tunneling Protocol) は、時代遅れで安全性が低いですが、未だに無料のVPNプロバイダーによって広く使用されています。PPTPは、より複雑なソリューションに比べて設定が簡単ですが、セキュリティ上の問題が複数あることで知られており、安全な接続を希望するのであれば、このプロトコルは避けるべきでしょう。

VPNを選ぶ際に注目するべき機能

完璧なVPNサービスを選ぼうとする際に注目するべき要素は数多くあります。それらの機能は以下の通りです。

  1. 速度

VPNに接続した際、閲覧やストリーミング、トレント、およびコンテンツのダウンロードするのに十分な速度であるかどうかを確認する必要があります。

  1. 暗号化

暗号化規格であるAES256暗号化は、セキュリティ保護のため現在、世界でも最先端の基準です。潜在的に複数の組み合わせによって複雑化されているので、それを破ることは困難です。なので、できるだけAES256暗号化を採用しているVPNを利用しましょう。

  1. サーバー数

サーバーの数が多ければ多いほど、各サーバーへのトラフィックの負荷が少なくなるため、パフォーマンスが向上します。また、ユーザーの近くにVPNのサーバーがあるかどうかを確認するようにしましょう。物理的な距離とインターネット接続の品質には相関関係があり、一般的にはサーバーに近ければ近いほど品質が良いと言われています。

  1. データ履歴

信頼できるVPNプロバイダーは、ユーザーのオンライン上での行動を追跡したり、データ記録を保存したりしません。

  1. カスタマーサポート

業界トップクラスのVPNサービスでは、問題が起こった場合にすぐに対応可能なカスタマーサービスを提供しています。このようなサポートは、テキスト、電話、またはウェブサイト上のFAQを介して行われる可能性があります。

まとめ

VPNを使用することでプライバシーが侵害される心配がなくなり、安全にインターネットにアクセスできるようになります。VPNを使用するたびにユーザーのデータは暗号化されたトンネルを通過するので、ユーザーのオンライン上での行動と位置情報を隠すことができるので、サイバー犯罪者などがユーザーのIPアドレスを追跡不可能になります。今回、こちらの記事を通してVPNについて様々なことを紹介してきました。VPNに加入することで、たくさんのメリットを享受することができるようになるでしょう。

FAQ

VPNを使用する理由は?

VPNを使用することは、オンライン上のプライバシーを保護するためのシンプルで低コストな方法であり、その必要性は高いと言えます。たとえオンライン上で何も法律に反するようなことをしていなくても、データを保護するための予防措置として最適です。

VPNの利用方法は?

以下ではVPNを使用し、すぐにデータの保護とIPアドレスをカモフラージュする方法を説明します。

VPNを利用するとインターネット接続が遅くなるのでしょうか?

VPNに接続することで、インターネット接続が遅くなる可能性があると聞いたことがあるかもしれません。残念ながら、特定のVPNサービスによってはインターネット接続が遅くなります。VPNは、暗号化された接続を提供し、遠隔地のサーバーを経由してデータを送信します。結果、接続に時間がかかるため、インターネット接続が遅くなることがあります。ただし、必ずしも遅くなるとは限りません。

多くのVPNプロバイダーは、ユーザーのインターネット接続を可能な限り高速に、時にはさらに高速にするためにあらゆる手段を講じています。

VPNは合法ですか?

ほとんどの国では、自国民がVPNを利用することを認めています。しかし、違法な活動を行なうためにVPNを利用することは違法です。VPNを使用してコンテンツを視聴することが法的な問題に発展することはまずありませんが、配信プラットフォームの利用規約を破った場合はユーザーのアカウントをブロックする可能性があります。さらに中国や北朝鮮などの一部の国では、VPNの利用を禁止または制限しています。

無料版VPNは安全に使用できますか?

有料版VPNサービスに比べて無料版VPNは、広告を表示したり、運営資金を調達するためにユーザーのデータを販売したりする可能性があるので安全とはいえません。さらに無料版VPNのほとんどは、1アカウントで複数の同時接続を禁止していたり、容量が限られていたり、接続が悪かったり、サーバーの設置場所が少なかったりと様々な問題があるのも事実です。